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第四話「子供は先生!?」
朝、もう何度この学園で向かえたのかは覚えていない。
最初の頃は全てが新鮮で全てが楽しみだったが、流石に私もこの学園に来て1年と9ヶ月あまり。
もうすぐ三年生になろうかとしている私にとって、この爽やかな朝は私の日常の一部でしかない。
そうそう、あの入学式の後、寮の部屋割の際、学園長先生もとい木乃香のおじいちゃんに会ったのが幸いしたのか私達3人は四人部屋に一緒に生活するようになった。
今だ四人目の入居者はいないが、私達は楽しく毎日を送っている。
今日から三学期、一応心気一転して行かなければ行けないと思い早めに起きて準備をしていたはずなのだが。
「こらーー!! アスナ起きろーーー!!」
爽やかで余裕のあるはずだった朝はアスナの寝坊で幕を閉じてしまった。
まあ、しかたの無いことなのだアスナは身寄りがなく。
学園長先生に預けられて今の状態に至っている。
学費などは言いと学園長先生も言っているのだが、アスナはどうもそれは性に合わないらしく自分で新聞のバイトをして返している。
私はアスナの体を揺するのはやめて、フウとため息をついてデコピンをする。
「このいじっぱり。」
この悪口も聞こえないのかアスナは気持ち良さそうに寝ている。
こんなに頑張っている子なのだ、どうかこの先は幸せでありますように。
「おーい、海里。 ウチもう準備できたけどアスナはまだ起きてないん?」
部屋の奥にいる木乃香がひょいと顔を出す。
しっかり制服を着込んで、寒さ対策もばっちりのようだ。
「うーん、まだ起きないのよ。 ねえ、木乃香まだ時間は大丈夫なの?」
私も流石に時間が気になり始め、手元に時間を確認する道具が無かったので木乃香に聞いてみると。
「・・・遅刻寸前や。」
木乃香も顔を青くして言っている。
確か木乃香も今日は新任の先生の案内を学園長から頼まれていたのだ。
相手の先生を遅刻させるわけにもいかない、いつもより木乃香は焦っているように見える。
と思った瞬間に奥に居た筈の木乃香が電光石火で私の前にやってきて・・・
「こらーー!! アスナー!! ええかげんにせんと遅刻するでーーーー!!」
寮内に木乃香の声が響き、私は耳を抑えこんで尚、頭がクワンクワンした。
大勢の生徒が通学路を走るのではなく「疾走」する。
簡単に言えば皆遅刻寸前なのだ、だから遅刻をしたくなければ死力を尽くして走りきるしかない。
普通ならば、この時間なら三人そろって遅刻を腹に決めるのだが。
今回は、木乃香の用事にアスナが今学期も担任をしてくれると信じている、いや勝手に思い込んでいる高畑先生にみっともない姿は見せられないと言っているのだ。
私達もそのおかげで、全力マラソンの真っ最中だったりする。
確か、今学期の初めは生活指導委員会がなにかするとか言っていたような。
〔学園生徒のみなさん、こちらは生活指導委員会です。 今週は遅刻者ゼロ週間、始業ベルまで10分を切りました、急ぎましょう。〕
放送が流れ、確かこんなのだったなーと思いさらにペースをあげて走る。
すると、前にいるアスナが自分達の状況をヤバイと感じて声をあげる。
「やばい、やばいー。 今日は早くでなきゃいけなかったのに!!」
そう言いきるとアスナは顔をしかめて文句を言い始めた。
「でもさ、学園長の孫娘のアンタが何で新任教師のお迎えまでやんなきゃなんないの。」
木乃香は笑い気味に
「スマン、スマン。」
と謝っていたので、私がアスナに反論をする。
「まあー、どっかの誰かさんが二度寝して遅刻しかけたなんていわないけどねー。」
木乃香の横で走る私はしらじらしい顔をしてボソリとつぶやく。
「そやなー。」
木乃香も同意して笑う。
「う、海里それは言わない約束でしょ。 それに学園長の友人ならそいつもじじいに決まってるじゃん。」
アスナは自分の不覚を隠しつつ木乃香の用事の相手について話し始める。
しかし、それは会ってみなければ分からないので、アスナに期待させるようなセリフをかけてみることにする。
「わかんないわよアスナ、案外渋いおじ様が来るかもよ。 学園長の元教え子なんかだったり。」
私は口を手に当ててムフフと言いながらアスナにささやく。
「うっ!!」
よし、思った通り動揺してるなー。
すると、木乃香が本を取り出して
「案外海里の言う通りかもしれんよ。 今日は運命の出会いありって占いに書いてあるえ。」
木乃香はこれでも占い研究部部長だったりする。
しかもなぜか結構当るのでアスナも私もクラスのみんなもある程度は信じている。
まあ、テストの占い等は危険な気がするので聞かないようにしている。
「え、マジ!?」
アスナは木乃香の方を向き真意をさぐる。
すると、木乃香は指をさしながら・・・
「ほら、ココ。 しかも好きな人の名前を10回言って「ワン」と鳴くと効果ありやて。」
うわー、木乃香ぜったいそれウソだろー。
つか絶対やりたくないよー、と思っているとき横にいたアスナが
「高畑先生、高畑先生、高畑先生、(以下略) ワン!!」
・・・はっ、しばし私は気が動転していたようだ。
しかし、アスナ本気でするのか。
私はアスナの高畑先生に対する思いの強さに圧倒、と言うより呆れた。
木乃香も呆れた顔をしてつぶやく
「あははは、ほんまアスナ、高畑先生のためなら何でもするわ。」
私も同感よ、木乃香。
と心で答えつつやっとアスナは冗談だったことにやっと気がつき
「殺すわよ。」
一言、正に呪殺系のオーラを発しながら言う。
木乃香はその言葉をまるで無視し占いの本を読み目新しいものを見つけて
「えーと、次は逆立ちして開脚の上、全力疾走50mして「ニャー」と鳴く」
「「やらねえ!!」」
流石の私もツッコミでアスナと声を揃えていってしまった。
まあ絶対やるわけないのだが、アスナなら夜な夜なやりかねないなー。
すると、木乃香が私達を見て感心したようにつぶやく。
「にしても、二人とも足はやいよねー。 私はコレなんにー。」
足に付いているインラインスケートを見ながら木乃香がつぶやく。
そういえば私もこの2年間がかなりの体力がついた。
最初はアスナと木乃香の足を引っ張ったりもしたが今では普通についていけるようになっている。
「私は、アスナと木乃香についていくために体力があがったのよ。」
はあーとため息をつきながら私は言う。
横のアスナはむくれ顔で
「悪かったわね。 体力馬鹿で。」
まあ、いつもの通り、朝の会話を交わしながら学校に向かっていたはずなのだが。
今日はちがっていた、風が冬にしてはとても穏やかに流れて。
とても私には心地よく感じていた。
「ん?」
不意にアスナが変な声を上げる。
それにつられて私と木乃香もアスナの方向を向くと、大きな荷物を背負ってガッシャガッシャと鳴らしている少年がいた。
まあ、なんと言うか「子供」だった。
正に子供だったしかし何でこんな所に子供が?
そんな事を考えているとその少年がアスナの顔を見て口を開いた。
「あのー、あなた失恋の相が出てますよ。」
少年はあっけからんと言ってのけた。
私や木乃香にいったのならば笑い話ですんだのかもしれない。
しかし、相手は子供嫌いのアスナ。
しかも、今日は高畑先生が担任になるか、ならないかの日だ。
あえて言うなれば、この少年は自ら砲弾と弾の雨が飛び交う激戦区へと飛びこんだというやつだ。
アスナは案の定、少年の言うことを真に受けてよろけている。
「「あっちゃー。」」
私と木乃香は小さく、本当に小さく声を揃えていった。
「何だとこのガキャー!!」
轟雷一閃とは正にこのことだろう。
アスナはこめかみに血管を浮かび上がらせ吼える、吼える。
私は内心「アスナ、もっと落ち着こう。」と思った。
「うわああっ!?」
少年は驚きつつ弁解を始める。
「い、いえ、何か占いの話が出ていたようだったので。」
アスナは涙をながしつつ(おーい泣くなー、そんなことで。)少年を問い詰める。
「どどど、どういうことよ。 テキトー言うと承知しないわよ。」
おいおい、子供相手に脅しをかけるなよーアスナー。
しかし、少年はさらに言う。
「い、いえ。 かなりドギツい失恋の相が・・・」
少年も後ずさりしつつ答える。
「ちょっとおおーーーっ!!」
本能で自分の今の状況が危険だと察知したのだろう。
私達二人から見ても危険な状況だ。
一応助け船を二人でだすことにして
「まあまあ、相手は子供なんだし。」
「うんうん、この子初等部の子と違うん?」
二人で声をかけるがあんまり木乃香はそれほど危険と感じていないようだ。
少年を見て「かーいー♪」などといっている。
まあ、説得が届くことは叶わず。
「あたしはね、ガキは大ッッキライなのよ!!」
といって少年の頭を鷲掴みにして持ち上げる。
うわー、相変わらずアスナスゴイなーと感心してしまう私がいた。
少年はというと、空中で「あわわ」と慌てている様子、当たり前か。
木乃香の方はというと。
「坊や、こんな所に何しにきたん?」
フツーに話してるよ。 いいのか?
しかたがない、私も合わせるか。
「ここはね麻帆良学園都市の一番奥の女子校エリアだよ。」
私が説明すると木乃香が「初等部は前の駅やよ。」といってアスナが少年に食って掛かって。
「そう! つまりガキは入ってきちゃいけないの。 わかった?」
力強く言うアスナ。
そ、そんなに子供が嫌いなのかー!!
片や少年は「は、放してくださいーーーっ。」と言っている。
まあ当然だな。
一通りアスナは文句を言い終わったのか少年を地面に降ろすと
「じゃあねボク!!」
あからさまに大人気無いセリフを言い放った。
「と、気をつけなよボク。」
私も少年に声を掛ける。
すると頭上から聞き覚えのある渋い声が返ってきた。
「いやー、いいんだよアスナ君に海里君。」
なにげに私の名前が混ざってる!? 木乃香はなぜ入っていないの?
「お久しぶりでーす!! ネギ君!」
案の定その声の持ち主は高畑先生だった。
アスナは思った通り・・・
「た、高畑先生!? お、おはよーございます!」
「「おはよーございまーす」」
緊張しているアスナをほっといて私と木乃香は挨拶をする。
ついでに横にいた少年が驚く言葉を発する。
「久しぶり、タカミチーッ!!」
はい? なんですか、高畑先生を呼び捨て!?
えーと、つまりこの子は高畑先生の知り合い?
アスナは少年の言葉に驚きズサーっと後づさる。
すると高畑先生が更に驚く言葉を口にする。
「麻帆良学園にようこそ。 良い所でしょう? 「ネギ先生」」
ん? なんかこの少年に不釣合いな言葉がついていたような・・・。
私が聞き間違いかと首を傾げていると木乃香も同じようなことを口にして驚いている。
すると少年は私達三人の前にたち咳払いをして
「この度、この学校で英語の教師をやることになりました。 ネギスプリングフィールドです。」
と頭を下げる。
「「え、ええーーー!!」」
私とアスナからはもはや驚く声だけしかしない。
しかし、木乃香。 あなたは驚かないのね・・・。
いつもと変わらない朝、私達はこれから大冒険をする羽目になる主軸との出会いを果たす。
それは、普通じゃないようでおもったより普通の出会い方。
なにせ少年は○○○○だったのだから。
不意に生野が通って来た道に静かな声が木霊する。
「今、生野 海里の道は始まりました。 あとはあなた次第。」
それはまるで新しい物語が始まるかのような、やさしい、やさいい声だった。
別談
不意に私は当りを見まわす。
回りには人っ子一人無し。
「えーと、二人とも驚くのはいいけど、今の状況はどう思う?」
固まっているアスナとほえーとしている木乃香の片に手を置く。
「「ああーー、も、もしかして、ち、遅刻!?」」
二人そろって声を上げる、しかし時既に遅し。
第四話「子供は先生!?」完